真夜中のパレード
まるで心の中に
荒ぶっている台風を飼っているみたいだと思った。
透子は自分の感情が
うまくコントロール出来ずにいた。
「私、は……」
――あなたに抱きしめてほしい。
そう言いたいけれど、
言えない自分が悔しくて仕方ない。
目の前にこんなに愛しい人がいるのに、
彼にはもう他に好きな人がいる。
少し前までは、
あんなに自分のことを。
いや、天音のことを、
大切だと、
ずっと側にいたいと、
そう言ってくれたのに。
そう言って大きな手で抱きしめて、
隣で安心して眠ることが出来たのに。
……その場所には、
今はもう他の誰かがいるのかもしれない。
それを想像するだけで、胸がきりきり痛んだ。
「どうした?」
彼の視線が、どこか甘さを含んだように感じた。
この視線だって、
普段は他の女性に向けられているんだろうか。
口を開こうとすると、
無意識のうちに涙がこぼれた。