真夜中のパレード
今までとは違った雰囲気をまとった透子に、
上条は目を見開く。
「高校に入学してすぐ、
先輩に無理矢理髪を切られました。
目つきが気に入らないと、
おどおどした態度が気に入らないと、
お腹を蹴られました」
透子の声は、
不自然なくらいに静かで落ち着いていた。
上条は、それがいっそう
彼女の苦しみを表しているようだと思った。
「知らない男に付きまとわれたり、
無理矢理車にのせられそうになったり、
勝手に写真を撮られたり、
使っていた物を盗まれたり、
他にもこの顔のせいで苦痛だった話なら
山ほどありますよ!
まだ聞きたいですか!?」
透子は両手で顔を覆い、
悲鳴のように声をあげる。
「美しければ幸せなんて、他人の幻想です!
私はこんな顔、大嫌いだった!
ずっとずっと、自分なんて嫌いでした!」
「七瀬」
「でも……」
透子の目から、
涙が一雫こぼれ落ちる。
「あなたは、私のことを、
初めて、受け入れてくれたから。
天音じゃなくても、
透子でもいいって。
それでも好きだって、言ってくれた……」
「七瀬、俺は……っ!」
上条の声を遮り、
無理矢理笑って小さく顔を振る。
「それも今日でおしまいです」