真夜中のパレード
「俺はっ……!」
透子は笑顔で彼を見上げた。
薄暗い部屋で、
カーテンの隙間から射しこむ月の光を受けた透子が
ぼんやりと輝く。
それは上条が好きだった天音そのものだと思った。
「上条さん、
もうこんな面倒な女のことなんて、
悪い夢だったと思って忘れてください」
上条はぎゅっと唇を噛む。
「私も全部、忘れますから」
忘れたくなんてないと、
忘れることなんて出来ないと言いたいのに、
透子の痛々しい笑顔を見ていると何も言えなくなった。
きぃ、と音がして、部屋の扉が開かれる。
急にさしこんだ廊下の眩しい明かりに、
上条は咄嗟に目を細める。
透子は上条の背中を、軽く前に押し進めた。
「明日からは、またいつも通りにしてください」
透子の声が、そこで真剣な響きになる。
「……それが無理なら、私はあなたの前から消えますから」