真夜中のパレード
☆
翌日の仕事は、驚くくらいに普通だった。
顔を合わせて挨拶をしたあと、
二人とも無言でタクシーに乗り込む。
車が目的地に向かう間、二人は何も話さない。
取引先の人間には上条はいつものように
仕事仕様の愛想のいい顔で談笑して、作業が始まった。
場所が違うだけで、
やること自体は初日とほとんど同じだった。
業者の人間が慌ただしく機材を設置するのを、
壁際に並んでただ見ているだけ。
フローリングの床に、重々しい機材が次々と並べられていく。
作業をする騒がしい物音が沈黙を気まずい物にさせず、
ありがたいと思った。
透子はちらりと隣に立っている上条の横顔を見やる。
長くしなやかな腕が目に入ると、
彼に寄りかかりたくなった。
目蓋が熱くなったのに気付き、
下に俯く。
上条は何も話さない。
透子も作業を見ている間中、一度も口を開かなかった。
隣にいるのに、
心の距離は遥か遠くに離れてしまったようだった。
そしてこれが、ずっと続いていくのだ。