真夜中のパレード


「それ、本当?」


桝田は少し自信がなさそうに答える。


「私も聞いただけで、ただの噂だけど。

でもほら、上条さんもともと
優秀なグループの人だからさ。

そのうち本社に行くみたいな話は
結構よく聞くじゃん?」


桝田に続き、他の二人も話をふくらませる。


「あー、それ私も聞いたこともある。

今期も他の支店はパッとしなかったけど、
うちだけ成績上がってたんでしょ?」


「そうそう、なんか決算の時期
上条さん超頑張ってたからさ」


「確かに、ここ最近の課長やる気ハンパ無かったよね」

「すごーい、じゃあこのまま昇進コース?」


「これは今のうちに手つけとくべきかなー」


「あはは、まぁよく見たらわりとかわいい顔してるけどね。
いつも眉にシワ寄ってるけどさ」


「でも最近ちょっと雰囲気やわらかくない?
元々不機嫌そうな顔のわりになんだかんだ面倒いいしさー」


三人は楽しそうに笑っているけれど、
まるで会話の内容が頭に入らない。


井上のくるりと巻かれた毛先がゆれ、
透子の顔の前に影がかかる。


「ねぇ、七瀬さんはどう思う? 
課長、けっこういいと思わん?」


「あ……」

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