真夜中のパレード
出来るだけ笑顔を作ろうと思うけれど、
ちっとも声が出てこない。
「そういえば珍しく出張二人で行ってたしさー、
何かなかった?」
もう普通の顔で話を聞いていられそうにない。
透子は申し訳無さそうに笑って、
トレイを握って立ち上がった。
「あ、あの……私、ちょっと電話してくる!
ごめん、先戻るね!」
「うん、了解ー」
食堂を出る直前まで、
三人の楽しげな話し声が聞こえてきた。
頭がくらくらする。
彼女達の楽しそうな声も、
食べ物の匂いも、
目にうつる光景も、
すべてが急に色あせてしまったみたいだ。
透子は目をぎゅっと閉じ、
廊下の窓に手をついた。
建物の外は明るいのに、光は中に入ってこない。
人気のない廊下はひんやりとしていて、
より憂鬱な気分になった。
透子は青い顔で廊下に立ち尽くしていた。
……上条さんが、いなくなる?