真夜中のパレード
☆
「あーあ、うまくいかねぇな」
向かいに座っていた透子が帰った後も、
冬馬は1人でビールを飲んでいた。
つい先程まで側にいた透子の顔を思い出し、
頭を掻きむしる。
勘違いしただけだった。
ただの気の迷いだった。
ずっと家族への愛着みたいな気持ちだった。
ただ、同情という感情を取り違えただけだ。
――そういうありがちなもっともらしい嘘に包めば、
透子もすんなり納得出来ると思った。
そして、それは無事成功した。
はずだ。
ビールは何の味もせず、
ただ喉から腹に落ちていっただけだった。
どんなに飲んでも、今日は酔えない気がした。
元々一生告げるつもりのない気持ちだった。
だから透子本人に言ってしまったのは、
最大の失敗だと思う。