真夜中のパレード
美しいなんていう単調な表現では、彼女の容貌をとても言い表せないと思う。
実際周囲の人間も、さっきからチラチラと彼女に視線を送り続けている。
彼女と一緒にいるのが自分であるという、理由のない優越感。
それに加え、少しの劣等感。
向かいにいるのがこんなに平凡な男では、格好がつかないだろうか。
「あのぅ……?」
「あぁ、すみません。黙りこんでしまって」
話しかけられ、はっと息をのむ。
彼女が心配そうに気遣ってくれ、自分に話しかけてくれている。
それはまるで、奇跡のようなことだと思った。
「いえ。お怪我は大丈夫ですか?
さっき、息が苦しいとおっしゃっていたので、心配で」
上条は軽く笑いかける。
「あぁ、何でもないんです。
慣れないことをしたので、ちょっと驚いただけですから」
それを聞いた透子も、ほっと頬を緩める。
「そうですか? それならよかったです。
助けていただいて、本当にありがとうございました」
笑いかけられ、上条はまた鼓動が早くなるのを感じた。
今まで一目惚れなんてものはしたことがなかった。
そんなものは軽率な人間がするものだと軽蔑さえするくらいだったし、顔だけで人間性を図るのはいささか早計だと思っていた。
だが、今の自分はまぎれもなく彼女に惹かれている。
それは偽りのない真実だった。
けれど今会ったばかりの女性に、一体どう接すればいいだろうか?
普通なら、ここでお茶を飲んで終了だ。
複雑な思いで、これからどうすればいいかを必死に考えていた。