真夜中のパレード
それはさておき、どうやら正体はバレていなさそうだ。
とりあえずそのことにほっと息をつく。
一番心配なのは変えようのない“声”だった。
声の似た人間なんていくらでもいるし、ごまかしようはあるだろう。
普段とは出来るだけ話し方も変えて意識的に明るくなるように話しているから、特におかしいとは思われていないようだ。
しかし、これからどうしようか。
正体がバレないうちに早く帰りたいのは山々だけれど、酔っぱらいから助けてもらってその上胸が苦しいと言っていたのを自らファミレスに連れ込んだのに、
「じゃあ私は先に帰ります」
なんてさすがに言いづらい。
言えない、そんなこと。
言葉が途切れ、何となく気まずい沈黙が落ちる。
すると上条が意を決したように、堅い声を発した。
「私は」
「は、はい」
びくっと小さく緊張しながら、それでも透子は返事をした。
「あなたのような美しい女性にあったのは、初めてです」
「……………………はい?」