真夜中のパレード
「ただ、なんだ?
時代遅れのナンパ男から助けられて、恋に落ちちゃいました?」
ふるふると小さく首を振る。
「そんなんじゃないよ。
ただ、お礼くらいはきちんとしないと」
あれから、何度か上条から電話がかかってきた。
相手はもちろん透子ではなく“天音”にだ。
最初のうちは出ないつもりで無視していたけれど、やっぱりそういう対応は透子の性格に合わず結局応答して食事の連絡までしてしまった。
我ながら押しに弱い性格だと思う。
そのことを冬馬にも相談したいと思ったけれど、言った途端に妙に機嫌が悪くなった。
「一応七時待ち合わせなの」
「もう来てんじゃん、あいつ」
言われて二階の窓から下を見下ろすと、確かに柱時計の前に上条が立っていた。
現在の時刻は六時半。
よくこんな早い時間に仕事を上がれたなぁ、と感心する。
自分ならともかく、上条はいつも九時くらいまでは残っているはずだが。
「上条さんもう来てるし、そろそろ行こうかな」
透子が席を立とうとすると、冬馬がさらりと注意した。
「おい、何律儀に時間通りに行こうとしてんだよ」
「え?」
「待たせてやれよ、三時間くらい」
「そんなこと出来るわけないでしょ!」
冬馬は不満気に上条を見下ろしている。
「あんなおっさんと飯食ってどうすんだよ」
「どうするって言われても……」