真夜中のパレード
「話聞くと、完全にお前に惚れてるじゃねーか。
このまま食事なんかしたら、つけあがらせるだけだぜ?」
「うん……」
透子もそれには正直どうすればいいのか分からなかった。
かと言って、やっぱり約束をしたのにわざと待たせるのはよくないと思う。
彼と食事をして、自分は一体どうしたいのか。
考えていると緊張してきた。
「私、もう一回化粧直してくる」
「今からそんなんで大丈夫かよ」
後ろから小さな冬馬の溜息が聞こえた。
トイレに入り、鏡の前でじっとウェーブのかかった長い髪を見つめる。
自分の顔なのに、どうにも見慣れない。
擬態を脱ぎ捨て、服も会社帰りに着替えて駅のロッカーに入れて来た。
この顔で外を出歩くのは、やっぱりなるべく避けたい。
――だけどこの顔で会えば、彼はとても喜んでくれる。
電話が繋がった時、上条は本当に心の底から嬉しそうな声を出していた。
そのことを思い出すと、どうしても彼の誘いを無碍に断ることは出来なかった。