真夜中のパレード
花よりも、美しい物
「あの!」
Sanntanaから飛び出し、透子は息を切らせて上条の元へと走った。
今日も少し雪が降っている。
真っ白な道に、新しい足跡が浮かんだ。
「おまたせしてしまって、すみません!」
透子を見つけた瞬間、上条の表情がぱっと明るくなった。
「いえ、全然待ってませんよ」
そう言った彼の肩に雪が積もっているのを見つけ、透子は軽く振り払う。
それに気づいた上条は、照れくさそうに目を細めた。
「それに私、急にこんな……」
透子は申し訳ない顔で花束を見つめた。
上条もそれに気づき、迷ったように花を差し出す。
「……これ、花束なんですけど」
薔薇の芳香が漂う。
真っ赤な花びらに白い雪が舞い落ちてふわりと溶けて、とても美しかった。
……だけど、日常でもらうのにこんなに大きな花束はやっぱり違和感がある。
上条もさすがに恥ずかしそうに、顔を強ばらせている。
「……すみません。もしかして、冗談でしたか?
焦って買って来たんですが、よく考えたら天音さんの年も知らないし」
彼も薄々何かおかしいということは分かっていたようだ。
「迷惑だったら捨ててきます」
「い、いえ!」
透子は首を振り、慌ててそれを受け取った。