真夜中のパレード
「本気じゃないかな、とは思ったんですけど。
天音さんの欲しい物があるなら、私に出来る限りのことはしてみたいと思って」
透子は一瞬戸惑って、じっと上条を見上げた。
こんなものを買ってきて、往来の道で持っているのなんて恥ずかしいに決まっているのに。
――そんな思いをしてでも、自分に花を贈ろうとしてくれたのだろうか?
そう思うと、また胸がいっぱいになる。
彼の愚直とも言えるほどに真っ直ぐな気持ちに、心を打たれた。
この花束の中には、彼の自分への思いがあふれるほどにつまっているような気がした。
花束を受け取り、そっと抱きしめる。
「ありがとうございます。嬉しいです」
それから薔薇の花束もかすんでしまうくらいの、魅力的な笑みを浮かべた。
「お花は、昔から好きなんです。
こんなに大きな花束をいただけるなんて、初めてで。
私、とっても嬉しいです」
上条は顔を赤く染め、咲き誇る薔薇よりも美しい透子の笑顔に見とれた。
「……それなら、よかったです」
最初は少し恥ずかしいと思った。
だけど今は彼に花をもらえて、本当に心から嬉しいと思えた。
上条も頬をゆるめ、嬉しそうな透子の姿を満足そうに見つめていた。
「私も天音さんに喜んでもらえて、本当に嬉しいです」