真夜中のパレード
day&night
「随分楽しそうじゃねーか」
病院に母のお見舞いに行った帰り、Santanaで冬馬に上条と映画に行った話をした。
それを聞いた彼がだるそうに放ったのは、そんな言葉だった。
「会社ではどうなんだよ?」
「別に、普通だよ」
「気づいてる様子はないのか?」
「ないねぇ」
透子は会社での上条の様子を思い返す。
そもそも、普段あまり彼と接点がない。
上条は外出していることが多いので、滅多に顔をあわせないのだ。
「七瀬、見積書は出来たのか?」
「はい、もう印刷してあります」
「来週説明会があるから、準備はしっかりしておけよ」
「はい、分かりました」
先週交わした会話は、そのくらいのものだった。
こうして考えると、透子として一緒にいる時間の方がよっぽど長いのにまだ二回しか会ったことのない天音が交わした会話の方がずっと多いのがなんだか不思議だった。
冬馬はけっ、と小さく息を吐く。