真夜中のパレード


上条は店員を呼び、本当に注文を変更した。


「肉うどんを一つ。七瀬は?」


「それじゃあ、私は天ぷら蕎麦で」


そう答えると、少し不満気な顔をしているのがまたおもしろかった。


届いた蕎麦を食べようとすると、何やら不服そうな上条と目があった。



「……何ですか?」


透子は笑うのを必死に我慢しながら、割り箸を割る。


「いや」


それから上条はぼそぼそと小さな声で言う。


「……天ぷら蕎麦がうまそうだなと思って」


その言葉に思わず声を立てて笑ってしまった。



「上条さん、やっぱり天ぷら蕎麦にすればよかったのに」

「うるさい! 今日は肉うどんの気分だったんだよ!」


くすくす笑いながら問いかける。


「天ぷら、差し上げましょうか?」

「いらないと言っているだろう!」



その言葉がツボに入って、しばらく笑い続けてしまった。
上条はむすっとした顔でそっぽを向く。


「お前、笑いすぎだ」


涙目になりながら彼に微笑んだ。


「上条さんって、もっと怖い方だと思ってましたけど話すと楽しいですね」

「バカにしてるだろう」

「してないですよ」


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