真夜中のパレード
水族館
「お待たせしました」
駅の入り口を出ると、かなり早めに家を出たにもかかわらずもう上条が待っていた。
「行きましょうか」
透子のことを見て、上条は優しく微笑んだ。
嬉しそうに声を弾ませ、彼女の首元にちらりと視線をやる。
「それ、つけてくれたんですね」
「はい」
透子が胸につけているのは、この間買ってもらった花のネックレスだった。
「かわいいから、気に入ってるんです」
そう答えると、彼も嬉しそうに笑った。
上条は、相変わらずこの上なく優しかった。
何をするにも気遣ってくれたし、段差のある所では自然と手を引いてくれた。
透子は大きな水槽の中を泳ぐ美しい熱帯魚に見とれた。
「水族館なんて、すごく久しぶりです」
上条も彼女の隣で微笑んだ。
「私もです。男だけだと入りづらいですし」
「彼女さんと来たりはしなかったんですか?」
自然とそんな質問が口をついて出てきた。
すると何か思い当たる節があったらしい。
途端に歯切れが悪くなる。