真夜中のパレード
「お姉さん、優しい方なんですね」
「言い出したら聞かないんですよ」
透子はくすくすと小さく笑う。
上条は、意外と気の強い女性に振り回される性格なのかもしれない。
「就職してからも姉が飼ってたんですけど、
仕事が不規則だから引き取れと。
私も帰りの時間が安定しないので、
断ったんですけど」
車の前に到着し、透子はぽろりと本音をもらした。
「見に行きたいなぁ」
「えっ?」
言った瞬間、上条の動きが止まった。
自分の言動が軽率すぎたのに気付き、透子も硬直する。
「す、すみません! 図々しいことを!」
子供みたいにただ猫がみたいという気持ちだけで口にしたけれど、
自分のことを好きだと言っている男性の家に行きたいというのは
色んな面で無神経だったかもしれない。
気遣うように彼に視線をやると、上条はどこか嬉しそうだった。
「いえ。天音さんなら、いつでも歓迎しますよ」
「いえ、で、でも……」
二人の視線が重なる。
上条はそっと目を細めた。
「天音さん」
「……あ」
また鼓動がはやくなっていく。
彼の手が、透子の頬に触れようとした瞬間。