真夜中のパレード
今度は透子が動揺する番だった。
「あの、私、家は」
家まで送るというならば、この間別れた道で車を降りなければいけない。
しかし雨も降っている今日、上条は自分を部屋の目の前まで送ろうとするだろう。
そこで部屋に入らず、しかも万が一タクシーやバスで移動する所など見られてしまったらさすがに不自然すぎる。
透子がしどろもどろになって考えているうちに、上条もはっとした。
どうやら彼女は自分の家を教えたくないようだったと。
この間彼女を降ろした後、わざわざタクシーで移動している所を見てしまった。
会ったばかりの男に家を知られたくないという気持ちは分からなくもないが、この悪天候で彼女にそんな手間は取らせたくない。
上条は一瞬考えた後、エンジンをかけた。
「じゃあ、私の家でいいですか?」
「は、はいっ!」
勢い良く返事をしてしまってから、少し後悔する。
男の人の部屋に行くのなんて、小学生の時幼馴染みの冬馬の部屋に行った以来だ。
途端に緊張してきた。
透子は「やっぱりやめます」と言い出そうと、何度も迷う。