真夜中のパレード
☆
迷って迷って迷っているうちに、すぐに上条の家に到着してしまった。
彼の家は閑静な住宅街にある落ち着いた雰囲気の薄茶色のマンションだった。
さっきより少しだけ勢いは弱まったけれど、雨はまだ降り続いている。
「とにかく、すぐ服を乾かしましょう」
「はい」
二人で並んでエレベーターに乗り込む。
視線が重なると、上条はそっと透子の髪を撫でた。
ぴくっ、と肩がこわばった。
かつら、ずれてないかな!?
透子が思ったのはそんなことだった。
どきどきしながら上条を見つめていたけれど、特に髪型におかしいところはなかったらしい。
にっこり微笑んで、するりと指をすべらせる。
「すっかりびしょ濡れになってしまいましたね」
透子も笑って彼を見上げる。
「本当に、すごい雨ですね」
彼の顔が、すぐ目の前まで近づいてきた。
また大きく胸が高鳴る。
どうしよう。今日の上条さんはなんだか積極的だ。
彼の熱い眼差しに縫い付けられたように、身動きがとれない。
「天音さん……」
「は、」
答えようとした所で、ポン、と音が鳴ってエレベーターが到着した。