真夜中のパレード
シャンプーからふいに上条の香りがしてどきりとした。
そうか、いつも使っているから。
それだけできゅうっと胸がしめつけられた。
濡れたかつらを装着すると、ずしりと重みがあった。
身体を洗いながら、ため息をつく。
透子は自分の恋愛偏差値の低さを憂いた。
ゼロ、どころかマイナスかもしれない。
上条は昼間の話から推測するに、当然何人かの女性と
付き合ったことはあるのだろう。
年齢を考えると当然だけれど。
そこでふと疑問が浮かぶ。
そういえば、上条さんは何歳だっけ。
よく考えると、正確な年を覚えていなかった。
一方、自分はというとこの間のキスが初めてだった。
あれが、ファーストキスだったのだ。
男性と付き合ったことはおろか、手を繋いだこともない。
正直に口にしたら、引かれるだろうから言わないけれど。
風呂場を出ると、洗濯機が動いていた。
上条が用意してくれた大きめのTシャツと
ショートパンツを着る。
Tシャツは上条の物で、ショートパンツは丈が
ちょうどよく女性物らしかった。
さっき話していた、お姉さんの物だろうか。
「服、借りちゃってすみません。
それとおまたせしました」