真夜中のパレード




ぎゅっと目を閉じる。


何か言わないといけない。
でも、ここまで来ておいて色々言うのも失礼なんだろうか。

だけど、でも……!



緊張して、とても緊張して、緊張しすぎたせいか。



きゅうう、とお腹から小さな音が鳴った。


上条もそれに気づいたのか、楽しげに声をたてて笑う。


透子が泣きそうな顔で目をぎゅうっと閉じた。


「天音さん、かわいいですね」


「は、恥ずかしい……」


「お腹すきましたよね」


彼は笑いながら携帯を取った。



「何か、出前でも頼みましょうか。何がいいですか?」



まとめて棚に置いてあったチラシを数枚渡される。



「ここらへんなら、ピザと、弁当と。
ファーストフードとか。
それに丼物なら近くで配達してくれる店があるんですけど」



「結構色々あるんですね」

「えぇ、何がいいですか?」



透子はにっこり笑って、蕎麦屋のメニューを指さした。



「じゃあ、今日はお蕎麦でもいいですか?
私は鴨南蛮にします!」


「はい。じゃあ私は天ぷら蕎麦にしようかな」


そう答えた上条を見て、透子はくすくす笑いそうになるのを必死に堪えた。

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