ふたりの気持ち
「どうしたの?」

彼は言葉を発さない。

ただ、ニヤリと妖艶に微笑むだけ。


「ねえ、昼休み終わっちゃうよ。私もう……」

行かなきゃ、と言う前にドン、と踊り場の壁に体を押し付けられた。

私の後ろは壁。

右横に見えるは彼の左腕。

見上げると相変わらずの彼の微笑み。



「やっぱりドキッとする?」

「……え?」

「『壁ドンされたらドキッとするよね』ってさっき、話してなかった?」

彼の言葉にハッとする。

「職場の誰もいない場所で、こっそり社内恋愛している彼とふたり、愛を確かめあうの。壁ドンでキスだよ! 絶対有り得ないことだけど、実際あったら絶対ドキッとすると思わない?」

「そうだねえ、それはドキッとするかも」





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