課長が私に恋してる?
(どうしよう、どうしようどうしよう…!)
数度ゆったりと瞬きを繰り返す如月は、琴子のすぐ近くで息を顰めている。
息を殺している、といった方が正しいかもしれない。
そう思えるくらいの身体の強張り、緊張が触れた部分から伝わってくるのだ。
さっきまでの寝息はいまもう聞こえずーー…いや。
そもそも最初から寝息など聞こえていた、だろうか?
とりあえず、いま目が合ってしまったら平静に対処出来る自信がない。
ぱっと窓の中の如月から目を逸らすと同時に電車はトンネルを抜けた。
そっと、本当に一瞬だけそっと如月の顔を盗み見ると、そのときにはもうすでに彼は再度目を閉じていた。
ほう、っと琴子は息をついて、けれど心臓は未だ鳴り止んでなどいない。
いっそ如月にも聞こえてしまっているのではと思うと、この場から離れたくて仕方がなくなった。