課長が私に恋してる?
一度ぎゅっと目を閉じる。
そろそろ琴子が降りる駅も近づいている。
声を掛けるなら今しか、なかった。
「き……っ、如月、課長…っ」
声は完全に緊張を帯びていて、自分でもキョドりすぎでしょと呆れてしまう。
すう、と息を吸って少しだけ呼吸を整えて。
「起きてください、駄目です、こんなとこで寝ちゃ」
次に発した言葉はさっきよりはマシになっていたように思う。
すると隣から、「んん…」と寝ぼけたような声がして。
間近にあった如月の瞼がそっと持ち上げられた。
「………高遠(たかとう)」
ぴったりと絡まった視線、端正な顔がほんの数十センチ先にあって、琴子を呼ぶ声は寝起きとは思えない程度にはハッキリとしていた。
(…………ほんと、この人寝てたのかな)
心の底から首を傾げている自分を一旦制して、ゴホンと琴子は切り出した。