課長が私に恋してる?
「……食器、下げますね。
あ、そういえば良いワインがあったんですよ!赤なんですけど、飲みますか?
チーズもあったんじゃないかなー」
口説かれてる、そんな風に考えてしまったことが恥ずかしくて、居たたまれなくて琴子は席を立つ。
食器を流しに置いて、水に浸してから、後ろの戸棚に向かう。
一番上の棚だったかな。
そう思って手を伸ばしかけて、でも、棚に辿り着く前にその手は捕らえられる。
「………っ、やっ」
首筋に吐息を感じる。
如月課長だった。
伸ばした右手は如月の右手に捕らえられ、彼の左手は琴子をうしろから抱え込む。
ぴたりとくっ付いた、琴子の背と如月の胸板。
不意に泣きたいような衝動に駆られた。
こんなことをされてしまっては、もう、誤魔化すことだってできない。
「………如月、課長」
「……そんなふうに敬称で呼ばれると凄く、悪いことをしている気分になるな」
だってアナタ悪いことしてますからね!
という叫びが喉元まで出かかった。