課長が私に恋してる?
(どーしよっかなぁ…)
琴子が降りる駅まではもうしばらく時間がある。
けれどいつまでもこのままというわけにもいかないだろう。
琴子はともかく、課長の降りる駅が過ぎてて、なんで起こさなかったんだって怒られるのは琴子だって御免だ。
(でもなあ、この状況で起こすのはちょっと憚(はばか)られるよね…)
課長がガッツリもたれ掛かっている以上、起きた瞬間に微妙な空気が流れることなど目に見えている。
はあ、と重いため息をもう一つ落として、琴子は目を閉じた。
そう、如月課長は厳しいくせに、こんなふうにふとした拍子にギャップを見せてくる。
あどけない、子供のような無垢な顔。
しかも酒にはめっぽう弱い。
あ、と一つ思い出して琴子はくすりと笑った。
そうだ、懐かしい。
如月課長との1番古い思い出だ。