課長が私に恋してる?


「………抱かない」



抱きたい、でも、抱きたくない、でもなく、抱かない。



そう、拗ねたように、ムスッと答えた如月に琴子は目を丸くする。



こんなに堪えきれなそうな目で誘って来てるかに見えた如月は、琴子を抱かない、と言った。



その台詞は一瞬遅れて琴子の頭の中に入ってきて、瞬間、一気に琴子は安堵する。
良かった、とりあえず"そういうこと"にはならないらしい。



しかしすぐに疑問が湧く。
じゃあ、どうして彼は私を口説いたんだろう。
口説いた目的がセックスではないのなら、望んでいるのは何だというのだ。



如月を見つめる。
いまだ彼は物欲しげにこちらを睨むように見据えている。



ともすればもう一度琴子に触れようと手を伸ばしかけ、怯えたように触れる手前で手を握る。



何をそんな高校生みたいなことを、と思いかけ、いや待てよ、イマドキの高校生ってもっとグイグイなのかななんて冷静になってみたり。
だから聞くことにした。課長は、琴子に、何を望む。



「………その台詞を私は、どう受け取ればいいんでしょうか。
課長は、私とどういう関係になるのをお望みですか」



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