課長が私に恋してる?
「あの、………下心とか、は」
そっと、窺うように聞いてみた。
すると如月も、窺うようにこちらの瞳をのぞきこんで。
「………悪い、無いわけじゃない。
でも、それを隠し通したら、それは無いのと同じだろう?
だったら添い寝するときは隠し通してみせる」
いや、隠し通すもなにも下心あるってアナタいま言ってますけども。
しかし余りにも真剣に交渉してくるその姿勢と、下心が無いと言い切れない狡くなり切れない不器用さに、図らずも好感を持ってしまう。
(………反則)
諦めにも似た溜め息が漏れる。
この人から滲む好意に、いま琴子は押されている。
そしてきっとこんなふうに押されることに微かに喜びすら、感じている。
(……好き、とかじゃない。でも、愛しくなる、予感)
「……どうだろうか」
そっと頬に手を添えられて問われ、琴子は笑った。
変わった関係だと思う。でも、断る理由もまた見つからない。
(だったら、飛び込んで見るのも、アリ?)
「………よろしくお願いします」
そうして上司との奇妙な関係が始まったのだった。