課長が私に恋してる?
目の前でシャコシャコと歯を磨いてる上司。
いま彼が着ているスウェットは、前に両親が泊りに来た時に父親が置いていったものだ。
ちなみに歯ブラシはさっきコンビニで買ってきた。
琴子はというと、先程化粧を落とし終えていまはスッピンもスッピン、どスッピンだ。
こんなことになるならもう少し肌の手入れしとくべきだった、と後悔は本当先に立たないものである。
時刻は夜12時を回ったところ。
どちらからともなくそろそろ寝ますかオーラが漂っている。
「………あの、かちょー」
「なんだ」
「ほんとにもう、今日から泊まってくんですか」
本日何度目か分からない質問を繰り返し、そっと上目遣いで彼を見上げる。
ちらりと如月はこちらに目を向けた後、諦めろ、とでも言いたげに口端を上げて。
「今日俺が帰ったら、お前のことだ、『スミマセン課長この前の話は気の迷いでしたー』てなるだろ絶対」
先手必勝だ、と呟いて洗面所へ行く如月の背中を見つめて、私なら確かに言いかねないなー、と空笑いが洩れた。