課長が私に恋してる?


如月が洗面所から帰ってきたのを見て取って、申し訳程度につけていたテレビの電源を落とした。
そろそろ寝るだろうと思ったからだ。



すると、さっきまで人工的な賑やかさに助けられていたこの部屋は、本来の通り静まり返る。
その、しんとした空気に琴子は自然緊張した。



なにか、話さないと。
そう思ってしまっている時点でわりと空気に耐えきれてないんだよね、とも同時に思う。



いつもはどうしてたっけ。
仏頂面のままの目の前の男も、なかなか手持ち無沙汰のようで視線をわずかに彷徨わせている。



「………あー、そろそろ寝る、か」



ぽそりと落とされた言葉に、うわあああついにきたあああ、と心の中だけで絶叫する。
ちなみに表面上は、緊張などおくびにも出さずに軽く頷いただけだ。



しかしイスから立ち上がった拍子にテーブルの脚にガッツンと足の小指を打ち付けた。
声にならない悲鳴を上げた琴子に、如月は可哀想なものを見るような視線を向ける。



動揺していることは筒抜けのようだった。



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