課長が私に恋してる?


「嘘。さっきすごい動揺してました」



そう言ってくすくすと笑う。
次第に暗闇にも目が慣れてきて、目の前に如月の顔があることが分かる。



端正な顔がいつものように仏頂面だ。
その顔は今日何回も見たなあ、とおかしくなる。



「お前の方こそ、さっき小指ぶつけてただろ」



「それは言わないで欲しかった」



そう言うと、如月が吹き出すように笑った。くしゃりと、あどけない表情につられて琴子も笑ってしまう。



ひとつ同じベッドの中で、いつも一緒に真面目に仕事をこなしている上司と笑っている。
その事実に、琴子は不思議な気持ちになりながらも心地よさに目を細める。



しかし、そこで唐突にひとつ思い出す。
いままったく関係はないけれど、いや、関係なくもない、むしろ大アリ。
そう、現在、琴子はブラジャーを着けたままだったのだ。



(わ、忘れてたああああ!!!)



世の中にはブラジャーを着けたまま眠れる女性も数多くいらっしゃることだろう。
しかしあいにく琴子はそれが出来なかった。


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