課長が私に恋してる?


「大丈夫ですか?」



そっと背中をさすると、男はびくりと飛び上がった。



「な…お、俺は全然酔ってな…うぅ……」



ああ、だめだ、これは。
近くに転がるペットボトルはスポーツドリンク。



「もしかしてこれ飲みました?」



すでに殻のそれを指差すと、男は両手で口を押さえながらこくりと頷く。



「スポーツドリンクはお酒飲んだ後に飲むと逆に身体にアルコールを吸収させちゃうんですよ。気持ち悪くなるのも無理ないです。……良かったらこれ、飲んでください。吐きたかったら袋もあるので」



そして近くにあった木箱の上に座らせると、ペットボトルを開けて水を渡す。



「す、すみません…」



すると男は素直に受け取って一気に水を煽る。



(お、おぉ…)



胸元を開いて楽にしたシャツから覗く厚い胸板。
綺麗にラインの見える、一目で良い生地だわかるスーツ。
乱れた髪、水を飲んで上下する喉。



(これは眼福……)



しかもよく見ると、顔だって悪くない。



案外役得かも?とミーハー心をくすぐられていると、水を飲み終えた男は少し楽になったのかホッと息をついた。


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