課長が私に恋してる?
カチカチと時計の音が暗い寝室に響いている。
さっきのことがあってから、琴子はなんとなく眠れないでいた。
いや、さっきのことがあってもなくても、今日は寝れていなかったように思う。
(ていうか、昨日よくのうのうと寝れてたなあ、あたし)
目の前には大きな背中を向けた上司。
誰かと眠ること自体久しくない経験で、なんだか不思議だよね、と思う。
別に付き合ってるわけでもない、会社の直属の上司。
れっきとした年上の男が隣にいるのだ。
そう思うとなんだかこれは幻なんじゃ、と思えてきて、如月にはばれないようにそっと、そぅっと手で如月の服の裾を握ってみた。
「………どうした」
すぐに気付かれて、びくりとする。
ああ確かに寝息聞こえてなかったもんなあ、と起きてたことに納得して、どうしたと聞かれても何とも言えない自分に焦る。
「ええと、なんとなく昼間のこと思い出してて」
とっさに出たのはそんな台詞。
思い浮かんだ昼間の出来事は今日あった唯一如月と共有できる話題だろう。