課長が私に恋してる?
言ってくれない…と、シュンとしていると、如月がこちらを振り向いた。
暗闇に慣れた目だから彼の表情もちゃんとわかった。
いつもは冷たい、というか完全無愛想な表情も今日はどこか温かかった。
「よくやってるよ、お前は」
そっと、ささやくような声音。
でもそれが返ってジワリと身に染みていくようで、恥ずかしいような照れくさいような何とも言えない心地だった。
「ほら、もういいから……さっさと寝ろ」
ぽすんと側にあったまくらで顔面を塞がれる。
「ぶっ」
「寝ないってことは、何かして欲しいんだと勝手に解釈するぞ」
続けられた言葉に、何かって完璧ナニかですよねー、と心の中で呟いて、大人しくもぞもぞと布団をかぶり直した。
「おやすみなさい、課長」
素直に従うと、「そんなに何もして欲しくないか」と不満げな声。
そして課長の落ち着いた「おやすみ」を聞きながら琴子はゆるやかに眠りへと落ちていった。