課長が私に恋してる?
scene5:ネクタイくらい自分で結んだらどうですか
それからというもの、土日を抜いた一週間、ぶっ続けで琴子は如月と過ごすこととなった。
ちなみに土日は如月は実家に帰省したらしいが、なにやらとても不服そうな顔をしていた。
琴子としてはまったくもってこちらこそ不服申し立てでもしたいところなのだが、添い寝を初めてそう時間を置かないうちにどうにもこの状況に完全に慣れ始めている自分がいた。まったくびっくり仰天である。
(あたしって順応能力高いのかなー)
カタカタと数字を打ち込みながら、そんなことを考える。
それどころか寝る前のピロートーク(もちろん語弊はある)はなんだか心地いいくらいで、その日あったことを如月に話すのが1日の楽しみのようにもなってきている。
最近気づいたのだが、童顔仏頂面の我らが課長は顔に似合わずやはり大人であった。
聞き上手、というのはこういうことか、と琴子はしみじみ感じていた。
ベッドの中での如月は(もちろんやっぱり語弊はある)琴子の話がどんなに取り止めがなくても、オチがなくても、ふむふむと興味深そうに聞いてくれる。たまにからかわれたりはするものの、それも嫌味じゃないのが不思議だ。
少し遠くのデスクをチラリと見る。
グレーのスーツは今朝琴子の家で着て出勤したものだ。そして今日のネクタイはなんと、琴子が結んだ。
その時のことを考えるとなんだか妙な気分になって、琴子はガツンとデスクに突っ伏した。