課長が私に恋してる?
「え、や、やだ!如月課長!朝ですよ!正気に戻って!!」
ぐいぐいと押し返すもビクともしない身体。
「いいから、結べ」
(よ、よくこの状況でそんなことが言える!)
至近距離でじっと見つめられる。
でも、余裕そうに見えて、課長の頰に赤みが差しているのは一目瞭然だ。
(そんなにいっぱいいっぱいなら最初からこんなことしなきゃいいのに……)
呆れたため息はなんとか飲み込んだ。
むしろその一生懸命さが可愛らしいとまで思ってしまったのは不覚。
甘やかす母親のように、琴子は笑った。
「仕方のないひとですね、課長は」
そうして腰に腕を回されたままネクタイを結び始める。
いちおう中学がネクタイだったので結べると思っていたのだが、案外人に結ぶのは難しい。
(逆向きってわかんないなー。あれ?どっち後ろに回すんだっけ)
「こっち」
そっと、大事なものに触れるみたいに手を重ねられて、
びくりと身体が跳ねる。