課長が私に恋してる?
(………もしかして)
怒りの理由に、バカバカしい答えを出してしまいそうになる。
この目の前の男はそんなに私情を挟んでくるひとだったろうか、と。
「じゃあ、ごめんね、また」
如月に見とれていたのかポッとなっていた田嶋に(琴子にはそう見えた)慌てて声をかける。すると田嶋もハッと我に返って(琴子にはそう見えた)、からりと笑った。
「おう、今度飲みに行こうぜ。合コンの結果教えてくれなー」
「うるさーい!」
そうして先を歩く如月について行く。
すると彼はなんと課を出て使っていない会議室に入っていく。
恐る恐る琴子もそれに従って、会議室に入る。
中はブラインドで締め切られており、数ある机の上を斜めに西日がブラインドに沿って模様をつけていた。
穏やかな夕方だ。
まるで、10日程前のあの電車の中ように。
(それなのになぜ目の前には機嫌の悪い上司)
眠ったフリして部下の肩にもたれる上司とどっちがマシかなと考えかけて、どっちも嫌だという結論になりそうだったので深く考えるのは止めた。