課長が私に恋してる?
(でもあのあと結局すぐ部長に見つかって、如月課長、強制送還されちゃったんだっけ)
あの酔っ払った姿見たらそうなるよねえ、とまた少し笑う。
肩に寄りかかる端正な顔をそっと見つめる。
あれだけ酔って、具合が悪くて尚、後輩の顔を一通り見ておきたいというあの言葉は何度思い出しても胸が熱くなる。
やはりあの当時から上に立つべき素質は備わってたのだろう。
二十代という若さで課長に昇進したのがその証拠だ。
柔らかな髪が揺れるの見ていると、頑張ったね、なんて柄にもなく褒めてみたくなる。
年上だし、上司なのに不思議なこともあるものである。
(ま、でもあのあと結局私のことは綺麗サッパリ忘れてましたけどね!)
酔ったら全部忘れるというのはあながち間違いではなかったようだ。
経理部経理課に配属されてすぐ、琴子は如月に気付いたのに対し、如月は全くもって琴子のことを思い出す気配などなかったのである。
(結構親切にしたはずなんだけどなー。散々こきつかわれてるし怒鳴られてるし、これってもしかして恩を仇で返されてるのでは…)