課長が私に恋してる?


ほんの少しだけ感じてしまうこの罪悪感は、きっと10日余り如月と一緒にいたせいだ。



この男が琴子をまるで好きであるかのような行動をするせいだ。



理不尽だ、と思う。



そう顔に出してみると琴子の気持ちが如月にも伝わったらしい。
そっとおでこが離れてく。
触れてた熱が消えて、おでこがひやりと冷えていく。



乱れた自分の前髪を直そうと手を伸ばすと、それより早く如月が琴子の前髪に触れた。
されるがままに前髪を直されながら、如月を見上げると彼はふう、とため息をつく。



「………知ってる。別に付き合ってるわけでもないしな」



ーー多くは望まない、一緒に寝てくれるだけでいい。
そう言った男は、やはり今も付き合ってくれなどとは言わない。



不可解だけれど、それが有難いとも思う。



「だから別に怒るつもりでここに連れてきたわけじゃない。
ただ、嫉妬してるってことを知っておいて欲しかっただけだ。合コンだって行けばいいし、彼氏だって作ればいい」



最後の言葉にハッとする。
驚いてまじまじと如月を見るも、表情は特に変わらなかった。きっと彼は大それたことを言った覚えもないのだろう。



「彼氏も作っていいって……あの、え?」



「多くは望まないって言ったろ」



そう言って如月は軽く笑った。
自嘲気味にも思えたその笑みは、琴子の胸に強くこびり付いた。


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