課長が私に恋してる?
その夜、琴子は久しぶりに一つのベッドを一人っきりで占領出来ていた。
課長はどうやら部長やらお偉いさんたちと恒例の飲み会らしく今日は琴子の家には来ないと、夕方例の会議室を出るときに言われた。
そのおかげで琴子は久しぶりに大学のときの友達とご飯を食べてから帰宅して悠々といまはベッドの中だ。
ひとりっきりのベッドは広くて快適でゴロゴロとさっきから気ままに転がっている。
そしてたまにピタリと止まっては考え込むのだ。
(彼氏も作っていいって……それじゃあ課長の目的って何なの)
そう、考えることはもっぱら夕方の会議室での会話だった。
ーー彼氏だって作ればいい。
あの台詞がぐるぐると頭の中を回っていて、心は何だかモヤモヤと落ち着かない。
例えて言うなら何の取っ掛かりもなくて解けない数式を前に小一時間正座させられてる気分だ。理系なもので良い例えも見つからない。
「本当に何も望まないつもり、なのかな……」
ぽつんと落ちた声は、何だかつまらなそうな響きを含んでいた。
………つまらないってなんだ。自分は課長に何かを望んで欲しかったのだろうか。自分で言っておきながらそれは腑に落ちない。