課長が私に恋してる?


と、そこまで考えた所で、ピンポーンと無機質なインターフォンの音が玄関の方から聞こえてきた。



びくりとその音に身体が跳ねる。
時刻はとっくに12時を回っている。



こんな時間に一体誰だ。
………思い当たるのは、ひとりだけいる、けど。



「………今日は来ないって言ったじゃないですか」



のっそりと起き上がって、玄関のドアを開けると案の定そこにはさっきまでずっと考えていた男の姿。
今朝までピッシリ着こなしていたスーツも、上司という世間の荒波に揉まれた後では心なしかくたびれている。



「……悪い。起こしたか」



すでに寝間着でスッピン姿の琴子は、ついでにさっきまでベッドでハイパーゴロゴロタイムだったため髪もぐしゃぐしゃだ。
本当、嫌な時に来てくれる。



「セーフです。今日はなかなか寝付けなかったので」



お前のせいでな!
という台詞は努力して心の中だけに秘めておいた。



「そうか。……上がっても?」



伺うような上目遣い。それにコクリと頷いて横に逸れると如月も無言で部屋に入ってきた。
パタンとドアを閉めて、とりあえず羽織っていたトレンチを脱がせてハンガーに掛ける。



それにきちんと礼を言えたことから察するに、飲み会だったらしいけれど飲んでないようだった。



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