課長が私に恋してる?
「来ないって言ったのにいきなり押しかけて悪かったな」
「ほんとですよ」
「たまたま飲んだのがこの近くの焼き鳥屋でな。
ほら、そこの大きな通りにある」
「ああ、あそこ美味しいですよね今度奢ってください」
どうしてか今日は会話にトゲが混ざってしまってる気がする。
課長は気付いてないようだが自分では分かる。
でも、なぜそうなってしまうのか、理由までは分からなかった。
(自分のことなのに分からないって、そういえばあんまり無いかもしれない)
けれど敢えてそこからは目を逸らす。
なんとなく、今は向き合う気にはなれなかった。
シュルシュルと衣擦れの音がして、課長がネクタイを解いている姿を認める。ドラマの中のワンシーンのように、それはなかなかに絵になっていた。
「課長って……、格好良いですよね、たぶん」
「おい、最後の三文字要らないだろうが」
ワイシャツのボタンを緩めていきながら、彼は呆れたように、急になんだと呟く。