課長が私に恋してる?
「いえ、ただ……そんなイケメンが私に執着する理由が分からなくて」
ぴた、と課長はボタンに掛けていた手を止める。
「執着だなんて随分な言い方じゃないか」
「お気を悪くしてしまったならすみません。
でも、それ以外なんと言えばいいかわからなかったので」
そんなイケメンが私を「好き」な理由が分からない。
そう言えば良かったのかもしれないけれど、彼が琴子を好きになる理由もはたまた琴子を本当に好きなのかさえ、やはりわからないのだからこういうほかないじゃないか。
(第一、私の見た目なんてBBクリーム塗りたくってそっからさらに粉叩いてチークとかマスカラとその他諸々付随させてようやっと平均並みの顔なのに自惚れたりなんて出来ないといいますか…)
中身だって、惚れてもらえるほど課長と深く関わった覚えもないのに。
「………何故だと思う?」
幾ばくかの沈黙のあと、ポツリと彼は言う。
その返事に不服そうに琴子は眉をひそめる。こういう切り返しは好きじゃない。分からないから聞いているのに、その質問はナンセンスだ。
文句の一つでも言おうと口を開きかけ、でも、それより先に課長が口を開いた。
「……教える気はない、きっと、想像すら出来ない」