課長が私に恋してる?


「ここから4つ目で降りますよ」



「わかった」



この日も、休日の午前中ということでそこまで電車に乗る人は多くはなかった。
並んで座ると、否応なくあの日のことが思い出される。



ガタタン、ガタタンと電車のリズムに合わせて柔らかな日差しが光の影を変化させていく。



それを眺めながら、あの日の肩のぬくもりと重さが蘇ってきて、なんとなく居た堪れない。
こんなに近くにいると、また、マリンノートの匂いがして、課長が近くにいるんだと実感する。



(でも、マリンノートは、私にとっては別な人を思い出させる)



「香水、良い匂いですね」



「え?……ああ、すごく薄くつけてるのによく気づいたな」



「私、この匂い好きですよ。……昔、妹がよくつけてたから」



「………そうか」



「はい。透き通った広い海のイメージです」



そう言うと、如月は少しだけ笑った。
意外とロマンチストだ、というつぶやきが耳をくすぐった。



意外とは余計だ、と心の中で琴子は舌をだした。


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