足音
「でも、一緒に逃げようって言ってくれて嬉しかったから、だから…」
ごくんと鼻水を飲み込む。
「だから、一緒にいたの。クラスの中心から連れ出してくれたから。王子さまみたいに、連れ出してくれたから」
この背の高さ。
威圧感まではいかない、安心する――私の一番好きな高さ。
「…だから、あのね」
「やめろよ」
冷たく、刃が向けられた。
あぁ本日二度目の失恋か。
ぎゅ、と目を閉じた。
痛くないように。
「――これ以上、俺を舞い上がらせるな」