四葉のクローバーの秘め事
「ち…あ…きちゃん……」



薙晶が居た。


血に濡れた包丁を両手で握り締めて。



「逃げて!」



そう叫んだのは聖だった。



「み…ず…きちゃん……」


「逃げて、薙晶ちゃん!」



浅く息を繰り返し固まったままの薙晶から、聖は包丁を奪い取る。



「でも………」


「これで良かったの。薙晶ちゃんは何も悪くない。大丈夫だから。清憲様呼んできて。」


「聖ちゃん……」


「お願い、薙晶ちゃん。」



「分かった。」



薙晶が清憲を呼びに事務所から出ていった。



「…………………………。」



薙晶を見送った聖は足元を見下ろす。


そして、奪い取った包丁を血が溢れ出ている場所へ突き刺した。




何度も、何度も。



何度も、何度も。



何度も、何度も。




その場所以外にも。




たくさん、たくさん。



たくさん、たくさん。



たくさん、たくさん。




最初のが分からない様に。




薙晶の声が再び聞こえてくるまで。

とにかく繰り返した。





その時の聖は、とても冷静だった。
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