夢の欠片 ~カタチあるもの~
委員会は思ったより早く終わった。
放課後、神永くんに話を訊くことになっていたから、あまり長く待たせないでよかった。
自称 新聞部エースの尾形真理に仲介してもらって『神永現象』に陥ったときの詳しい話をしてもらうことになっていた。
でも、肝心のバーニングシャッター真理はというと「締め切りとアイデアがタッグを組んで迫ってくる」と謎の言葉を残して帰ってしまったのだった。
私と羚弥くんは一年四組の教室へと急いだ。
神永くんはドアのすぐ近くの席で参考書を開いて勉強していた。
髪は校則に則って耳と眉毛をきちんと出す長さ、爪は適度に揃えられ、机に向かう姿勢からは育ちの良さが窺える。
つまるところ、清潔で時間を無駄にしない神永くんすごい。
「ごめんね、待たせちゃって」
「ううん、勉強してたから」
「それで、さっそくだけどいいか?」
「あ、そのことだけど」と神永くんは少し眉を寄せて答えた。
「どうかしました?」なぜか敬語になってしまった。
「先に言うと、なにも覚えてないんだ。欠片も」
私は羚弥くんと目を合わせた。
実のところ、昨日の話で真理本人が言っていたからやっぱりかと思っていた。
なら私たちができることはもう一つだけ。
「『CD』を再生したのは覚えてるか?」
神永くんは、やはりわからないといった様子だった。
「CDはこれの中にあった」机の中からポータブルCDプレーヤーを取り出した。「自分で再生したかも覚えてないけどね」
CDプレーヤーは日焼けしていて、再生ボタンが擦り消えている。
一目見て年季が入っているとわかるのに買い替えないのは、神永くんが大切に使い続けていて、きっと親孝行だからなのだろうと思う。
でも、手の大きさくらいあるのにいつも持ち歩いてるのか……。
やっぱり神永くんはすごいんだ。
「そっか。誰からCDを借りたかわかればなぁ」
「ああ、それは——」
「あれ、優奈?」
廊下から教室へと声がかけられたので、私は振り向いて声の主に向かう形になった。
「どうしたの? こんな時間まで」
見てみると、陽菜と学くんが並んでいた。