夢の欠片 ~カタチあるもの~
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「なにか証拠があるの?」
「それがさー、ぜんっぜんわからなかったんだよね。正直、今日まで私も眉唾物だと思ってたんだけど」
「『たんだけど』?」
「見つけたのよ、証拠。神永くんが持ってたこの『CD』をねっ!」
真理は剥き出しのCDをブレザーの左ポケットから出して掲げた。
棚から牡丹餅、いや、神永くんから証拠。
いや、それだと神永くんが犯人みたいだ。
私たちはソファの背もたれに力を抜いてくったり。
「反応うすいなー、せっかくぐったりしてる神永くんを尋問して手に入れたのに」
「神永くんはそういうキャラじゃないから!」
真理は一歩ずずいと乗り出してひそひそしゃべり始める。
「神永現象とこのCDはきっとなにか関係あるに違いないと思うのね。それで、二人にはその調査をお願いしたいの」
「はぁ!?」
「えっ!?」
これこそ寝耳に水、いや、水を得た魚、だった。
「お願いっ、夢中で神永現象を調べてたらいつの間にかデッドライン近くてピンチなの!」
「断る。なんでわざわざそんなめんどうなこと……」
「私、優奈のことに関しては、捜索とか陽菜ちゃんとの再会とかすごーく貢献したと、思いません?」
「いつもお世話になってます! 手伝うよ! 手伝いたいです!」
「……? なんの話?」
してやったりとずるそうな顔をしてソファに座り直す真理、でも今度の顔は今までと少し違っていました。
「方々手を尽くしてはみてる。県内の新聞部が協力して原因の特定を試みてるけど、それでもダメなの」
私はその時、真里の瞳に意志の灯ったのを、この目で見ました。
「この事件はなにか危うい感じがしてる。このCDがカギだとしたら、きっとすごく危険なモノだから」
夕陽は沈み切って、もう隠れてしまっていた。
古びた橙色の街灯が代わりに街を飾る。
心もとなさが眉間によって、夜の香りがした。
「やっと掴んだ解決の欠片なの。だから、お願い。私たちに力を貸して」
そんなやり取りがあって、私と羚弥くんは謎のCD、ひいては神永現象の原因調査を引き受けることになったのでした。