夢の欠片 ~カタチあるもの~
家に着くと真弓お姉ちゃんがもう晩ご飯の用意を始めていた。
互いに着替えを済ませてリビングでCDと睨めっこをしていると不思議そうに私たちを見つめる視線を感じた。
「な、なんでもないよ……?」
「そーお? なんか変だねー」
す、するどい……。いや私の嘘がヘタなのかな……。
「合唱コンクールでどんな曲歌うかの相談」
「CDばっか見つめてー?」
「う、うん」「まぁな」
別に隠したいワケじゃないんだけど、どうにも音楽を聴いただけでどうこうなってしまうなんてやっぱり信じられなくて。
だから真弓お姉ちゃんに説明のしようがなくて。
でもリビングのテーブルで持て余しているという状況を続けていてもしょうがない。
「半分くらい勢いで持って帰ってきちゃったけど、コレどうしよ?」
「まずは、本物かどうか確かめなきゃな」
どんな方法で? というのは、きかなくてもわかることだった。
このCDを再生してきくだけでいいんだから。
「私がきく」
「駄目だ。危険過ぎる」
「羚弥くんがいるなら大丈夫。それに私が暴れ出したって羚弥くんならなんとかしてくれるって、知ってるから」
気持ちをそのまま言葉にする。
勢いや感情任せに言ったんじゃないと断言できる。
信じている、心の底から。
ご飯を食べた後できくことに決めて、羚弥くんはお風呂に、私は気を紛らわせたくてソファに横になった。
遠くからお皿の音が聴こえてくるような錯覚。
突然、強烈な睡魔に夢の中へとさらわれていった。