夢の欠片 ~カタチあるもの~



にじんだ天井が見えた。


ゆったり身体を起こすと頭の重さに気付く。

鼻の奥がツンとして、お腹の奥はグツグツと沸き立っていた。


涙。

どうしてだろう。悪い夢でもみたのかな。

思い出せない。大事な夢だったような。でも、思い出したくない。


「あらー、起きたー?」


真弓お姉ちゃんがリビングに入って来た。

泣いてるのを見られたくなくて、顔を背ける。

声が震えないように気を付けながら明るく努めた。


「うん、今。でも、まだ眠い」


「まぁ、まだ八時前だしゆっくりしてたらいいよー」


すんと鼻を鳴らしてまたソファに横になる。

頭が重たい、頭が痛い、考えるのは後にしよう。

風邪を引いてしまったかもしれない。季節の変わり目だからなぁ。


「じゃあ再生するねー」


「はい。……えっ」


つい反射で返事してしまったけどもなんのことかな。

再生? 映画かなにかこれから見るの?


見るといつの間にかリビングのごちゃごちゃとしたローチェストの上にオーディオコンポが設置されていて、

真弓お姉ちゃんはそこにCDをセットしていた。


「『CD』! そのCDもしかしてっ!」


「聴くよー」


「待って!」


言ったときにはもうスイッチを押してしまっていた。



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